【短編】手のひらを、太陽に…
 結局、公英は仕事で帰り、後は志音が荷造りを手伝うことになった。

「明日退院なの?偶然だね。」

 志音は荷造りの様子で察しがついていた。

「偶然って…志音も明日退院?」

「まぁね。」

「そうだったんだ…。ごめんね!私のほう手伝ってて平気?荷造りは?」

「私は平気。1週間しかいなかったから、夜やればすぐ終わる。葵はこの荷物からすると長期だったようね。」

 一瞬、葵の表情が曇ったのが志音には見て取れた。

「まぁ、そうね!」

 葵の表情はすぐに笑顔に戻った。

「そうみたいだね。いいね、お姉さんも退院するの待ち遠しそうだったじゃない。」

「志音にはいないの?退院を待ってくれる人。…家族とか。」

 志音の表情は暗くなった。

「いないよ。母は行方不明、父は刑務所。明日からは知らないシセツでの生活だよ。」

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