【短編】手のひらを、太陽に…
 一方、志音は葵から毎日メールを受けていた。

 葵は姉の結婚式の写真をメールにして送ってきたり、姉の新居の写真を送ってきたり…葵はとても姉の公英が好きだというのが日々伝わってきた。
 志音が返すメールはたった1、2行だったが、心の中では葵のことがますます興味深くなっていた。




 志音が退院して2週間後の土曜日、志音のもとに葵と公英が訪れた。3人は近場のファミレスでランチをした。
 そこで姉妹の話題に出てきたのは、洸(ひろし)という男性のことだった。
 彼は、公英の高校の同級生で高校卒業後、京都の大学へ進学し、そこである時から葵と文通を始めたとのことだった。

「何で文通なの?メールやネットじゃなくて。」

 志音は疑問に思って尋ねた。


「うん…。病院に入院してたから…。ほら、病院てケータイ禁止でしょ?」

 ―…そういえば、どうして葵は病院に入院してたのだろう?病気のようだったし、長期だったみたいだし…。

 志音は心の中で引っ掛かったが、何か聞いたら悪いような気がして、あえて深くは聞かなかった。

< 20 / 64 >

この作品をシェア

pagetop