【短編】手のひらを、太陽に…
 今、洸は大学を卒業して名古屋で働いているという。

「そういえば、洸が大学を出てから、ずっと東京(こっち)に来てないよね。もう半年近く会ってないのかぁ…。」

 公英は思い出したように、葵に言った。

「うん…そだね。」

 言葉少なげに葵は答える。少し淋しそうな様子だった。

「退院したって電話は、当然入れたんでしょ?」

「うん!もちろん。でも忙しそうだった。…会いたく、なかったりして。」

 その言葉で、志音と公英は葵の顔を見た。

「……そういえば、葵。洸に伝えたの?」

「………うん。だいぶ前にね。」

「何かあったの?」

 姉妹の会話に志音は割って入る。

 葵は一拍の間を置いてから、苦笑いを浮かべて言った。

「告白したの。洸くんに。」

< 21 / 64 >

この作品をシェア

pagetop