【短編】手のひらを、太陽に…
 2人は外見も中身もとても釣り合いの取れた美男美女カップルだ、と志音は第一印象ながらに思った。と同時に、やはりこの場に志音は相応しくないと思った。

「夜には帰るんだよね、葵。」

 志音は突然尋ねた。

「あ…うん。」

「じゃあ、お二人さんは積もる話もあるだろうから、ゆっくり話してて。私は名古屋初めてだからいろいろ回ってくる!7時にまたここでね。じゃ!」

 葵と洸は顔を見合わせた。そして思い出したかのように気まずい空気が流れた。

「ちょ、ちょっと待って!せっかく3人で会ったんだから、食事でも…。」

 葵は気まずい空気を振り払うように志音を止めた。
「あぁ…いいよ。また今度、洸さんと会ったときで!じゃあ!」

 そう言うと志音は2人から離れていってしまった。

「……まぁ、ね!」
 葵は笑顔で洸につないだ。
「…んー、まぁ、な!」
 洸は葵に笑顔で返した。

 2人はしばらく引きつった笑顔を向き合わせていた。

「な、名古屋…案内するわ。」

「あ…、そうだね!よろしく。」

 2人は気まずいまま歩きだした。

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