【短編】手のひらを、太陽に…
 しばらく2人は名古屋の繁華街を宛てもなく歩いていた。

 葵はずっと黙っていた。洸がずっと何かを言いたそうにそわそわしていたからだ。


 ようやく決意がついたのか、洸は立ち止まって葵を見た。

「葵…あのさ。…俺、葵に謝らなきゃならない。」

 葵は不思議そうな顔をした。

「俺…葵の闘っている現実から、目を背けようとした。葵から…逃げようとした。」

「…どういう、こと?」

「最初に公英から、葵のこと紹介されて、文通をすることになって、葵の心情がわかってきて…俺は葵のこと、ずっと支え続けようって誓った。そう思ってたのに…。そう、思っていたのに…俺は…。いつの日か葵の傍にいることが、怖くなったんだ。」

「…怖く、なった?」

 洸は葵のほうを申し訳なさそうに見た。

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