【短編】手のひらを、太陽に…
 公英は志音の反応を予想してたかのように笑みを浮かべた。

「そうよ。志音…洸に言ったんだって?葵を素晴らしい人間だって。決してそんなことはないわ。葵だって嘆き苦しみながら、無様に生きてきた。その時のことを、志音は見ていないもんね。びっくりするかも知れないけど、その時の葵はしょっちゅう病室を抜け出して、病院の屋上から飛び降りようとしたりもしてたのよ。」

 志音はその言葉を聞き、はっとした。葵と出逢ったとき…志音が病院の屋上から飛び降りようとして葵に止められた場面がふっと脳裏をよぎった。

 ―葵は、病院の屋上から飛び降りようとする私に、過去の自分を見たんだ―

 志音はそう悟った。


 ―だからとっさにでもあんなことが言えたんだ。“あなたが死んだら!私が悲しい。”なんて…。

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