恋し、挑みし、闘へ乙女
国家親衛隊の動きは乙女の予想以上に早かった。



「早いのは当然です!」

腰に手を当て仁王立ちしたミミが、ソファに腰を下ろす乙女を睨み付ける。

「国家親衛隊隊長のお見合い相手が拐かされたのですよ。それはもう上へ下への大騒ぎだったのですよ!」

「おまけに糸子様があんなことを言うから……」とミミがグッと唇を噛む。

「彼女がどうしたの?」
「浮気かしら、と仰ったのです」

へっ? 乙女がポカンとミミの顔を見返す。

「もう少しで大スキャンダルになるところでした。紅子さんなんて泡を吹いて倒れそうでしたよ。でも、蜜子様を筆頭にお茶会のメンバーが糸子様を諫めて下さって」

「――全く訳が分からない。どうしてそうなるの?」

クエスチョンマークを貼り付けた顔で乙女が訊ねる。

「私は糸子様に呼び出されて茶房で糸子様を待っていたのよ。でも現れなくて……あの男が……」

「糸子様は『そんなお約束はしていない』と仰り、『その男と浮気するために私の名前を使われたのでは?』とまで仰ったです」

「どうなっているの? 全く意味が分からない」と乙女はフルフルと首を横に振る。
調べによると糸子は、『携帯電話は紛失した』と言ったらしい。

「あの電話は確かに糸子様の声だったわ。糸子様でなかったら誰からだったと言うの?」

「それは私も知りたいですね」の声と共にドアが開く。

「うわっ、綾鷹様!」
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