恋し、挑みし、闘へ乙女
「大丈夫。私は君のことを信じている。私以外の男性と愛の逃避行なんてことは絶対にない」
「愛の逃避行ですって!」

何でそんな話になっているの? 
頭を抱える乙女に、「大丈夫か?」と綾鷹が訊く。

「全然大丈夫じゃないです!」

ソファーの背に身を預け、乙女が綾鷹を悲しげに見る。

「私、不貞を働いた女のレッテルを貼られてしまいました……未だに処女なのに……」

フッと笑みを浮かべ、乙女の頭を撫でながら綾鷹が真面目くさった顔で言う。

「大丈夫。そこはキッパリ私が否定するから。乙女のファーストキスも処女も私が頂きましたとね」

「ありがとうござい……」と言いかけ、我に返った乙女が真っ赤になりながら綾鷹の手を払い除ける。

「なっ何を! そんな根も葉もないことを発表したら、私、舌噛みますから!」
「そう? 誤解を解くのに手っ取り早い方法じゃない? それにファーストキスは……」

涼しい顔で宣う綾鷹に、乙女は激しく手を振り「やめやめ! ストップ!」と話を止め睨む。

「手っ取り早くなくていいですから、私の携帯電話を探して下さい!」
「でも、着信経歴を消されていたら?」
「ロックがかかっています」
「馬鹿だな、そんなのプロの手でいくらでも開けられるよ」

「というよりも」と思惑げに言う。
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