恋し、挑みし、闘へ乙女
「君のって……まさかですが桜小路家ですか?」
「そう、そのまさか。この間の拐かしの件は公にはなっていないが……」
そうだった、と乙女はミミの言葉を思い出す。
『――桜小路のお屋敷にも、女々様のお屋敷にもご連絡しましたが……いらっしゃらなくて……』
結局、身内には知られてしまった。
「だから、お詫びにね」
「紅子さんが梅大路の代理で桜小路の家に行ったということですか?」
綾鷹が頷くと「そんなことしなくていいのに」と乙女は申し訳なく思い、「すみません」と謝る。
「君が謝る必要などない。おそらく今回の拐かしは、月華の君を含めた我々が元だろうからね。君はその犠牲になっただけだ」
何となくそうだろうなぁ、と思っていた乙女だが、やはり紅子が謝罪に行くのはお門違いに思えた。
「それに、ご両親に心配をお掛けしたのだ、近い将来、夫となる私が妻の代わりに謝罪するのは当然だろ?」
車のドアに手を掛けながら綾鷹は「だから君が心を痛めなくていい」と言い、「さぁ、乗って」と乙女を促す。
夫とか妻とか……乙女は上気する頬を隠すように素早く車に乗り込む。
「まず向かった先は茶房鼓みたいだね?」
ナビから先日の経歴を呼び出し、それに従い綾鷹は車を発車する。
「そう、そのまさか。この間の拐かしの件は公にはなっていないが……」
そうだった、と乙女はミミの言葉を思い出す。
『――桜小路のお屋敷にも、女々様のお屋敷にもご連絡しましたが……いらっしゃらなくて……』
結局、身内には知られてしまった。
「だから、お詫びにね」
「紅子さんが梅大路の代理で桜小路の家に行ったということですか?」
綾鷹が頷くと「そんなことしなくていいのに」と乙女は申し訳なく思い、「すみません」と謝る。
「君が謝る必要などない。おそらく今回の拐かしは、月華の君を含めた我々が元だろうからね。君はその犠牲になっただけだ」
何となくそうだろうなぁ、と思っていた乙女だが、やはり紅子が謝罪に行くのはお門違いに思えた。
「それに、ご両親に心配をお掛けしたのだ、近い将来、夫となる私が妻の代わりに謝罪するのは当然だろ?」
車のドアに手を掛けながら綾鷹は「だから君が心を痛めなくていい」と言い、「さぁ、乗って」と乙女を促す。
夫とか妻とか……乙女は上気する頬を隠すように素早く車に乗り込む。
「まず向かった先は茶房鼓みたいだね?」
ナビから先日の経歴を呼び出し、それに従い綾鷹は車を発車する。