恋し、挑みし、闘へ乙女
次に向かったのはサイドテーブルだ。引き出しが一つある。それを引き抜くが……期待虚しく、何も起こらない。

「――見取り図から言えば、ドアの正面、あの壁の向こうが隠し部屋ですよね」

乙女は引き出しを片付けながらその壁に向かって歩き出す。

どこを触っても違和感はない。ただの壁だ。

「他の部屋も調べます」

だが、どの部屋にも隠し部屋に続くドアは見当たらなかった。

「そろそろタイムリミットだ」
「時間制限なんてありました?」

乙女が反発するように言うと綾鷹が溜息交じりに言う。

「見取り図を見てご覧。かなりの隠し部屋があるのだよ。それを全て見たくないのかい?」

グーの音も出ないとはこのことだ。乙女は仕方なしに「降参です」とむくれながら言う。

「了解。約束をお忘れなく」

クッと笑みを浮かべ綾鷹が廊下に出る。悔しい思いを抱きながらも乙女が後に続く。

「廊下側もしっかり見ましたよ」
「もう一度見取り図をジックリ見てご覧」

「違和感はないかい?」と言いながら綾鷹が「ここだよ」と指を指す。

そう言えば……と乙女は見取り図と実際の壁を見比べながらアッと気付く。
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