恋し、挑みし、闘へ乙女
「窓側の壁が分厚い!」
「そういうこと。それに窓側なのに窓がないのは不自然じゃない?」

言われてみればそうだ。窓側じゃない方に窓がないのは当たり前だが……フムフムと乙女が頷く。

「部屋をリアルに見ると不自然さに気付かないが、見取り図を作ってくれたお陰で、その不自然さが浮き彫りにされた」

「綾鷹様の部下って優秀なんですね」と言う乙女に、綾鷹が「当然だろ、私が御大なのだから」といけしゃあしゃあと言う。

乙女は呆れながらも、本当のことだと思うので反論はしない。

「で、隠し扉はどこにあるのですか?」

その代わり話の先を催促する。

「これについては部下たちも随分手こずったよ」

綾鷹は勿体ぶったように肩を竦め、足元を見る。釣られて乙女も下を見る。

「幅木が見えるだろ?」

壁と床が接する部分に設けられた横板を綾鷹の爪先がコツコツと指す。

「そこを靴先で突っついてご覧」

言われた通りにすると……。

「あらっ?」

一箇所だけ明らかに音も足触りも違う箇所がある。

「そこを今度は三回続けて突っついてご覧」

また言われた通りにする。すると壁の奥からカチャと微かに鍵の開く音が聞こえた。
< 161 / 215 >

この作品をシェア

pagetop