恋し、挑みし、闘へ乙女
天才の中には往々にして世間知らずが多々いる。鏡卿も類に漏れずだと綾鷹は言う。

「もしそれが事実なら、過去の誤解が現在の悲劇を生んでいる、ということですよね。それなら、早く鏡卿を見つけ真実を教えてあげないと……」

「ああ、その通りだ。だから月華の君も国家親衛隊特別チームに密命を与えたのだよ」

「特別チームですか?」何だそれ、と乙女が首を捻る。

「親衛隊の各部署から選りすぐられた人物が集まるチームだ。当然、私はメンバーの長だ」

何気に自慢している?

「君が知っている上ノ条や常磐公爵などもいる」
「常磐公爵って、蜜子様の旦那様ですか?」

綾鷹の自慢を速攻でスルーし訊ねると、「そうだ」と綾鷹が肯定する。

「今回の拐かしに多大に尽力して下さったのは、誰あろう蜜子夫人だ」
「ミミからそう聞きました」

乙女は、日を改めて挨拶しに行こうと思っていた。

「おっと忘れていた。夫人から言伝を頼まれていたんだ。『当日の召し物はとても似合っていたけど、貴女にはブルー系の方がもっと似合うわ』とね。で、同じデザインの色違いを預かった」

「ちょっと待って下さい。あれはマダム・メープルの一点もので……」
「ん? 知らなかったのかい、彼女がマダム・メープル、その人だよ」
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