恋し、挑みし、闘へ乙女
「で、そういうことを総合したら鏡卿の存在が浮き彫りになった、ということだ」

「でも、どこに?」

館は調べ尽くしたはずだ。

「そこなんだよね」と綾鷹が顎をコツコツと叩きながら宙を見る。そして、「とにかく」と言いながら、乙女の手を取る。

「次の隠し部屋に行こう!」

超小型DAPを回収して向かった先は館の北端の部屋。ここはどうやら図書室のようだ。

「この部屋は……見取り図で言うと、その本棚の向こう側が隠し部屋となっていますね」

天井まである壁一面の本棚には入り口と思しきドアなど当然ない。

「さて、ここは分かるかな?」

小説なら本に仕掛けがあったりするのだが……それを見つけるには、あまりにも数が多すぎる。

「降参します」
「闘わずして負けを認めるのかな?」
「綾鷹様がどんな要求をするのか心配ですが……」

「それよりも」と乙女が見取り図をトントンと指で差す。

「全ての隠し部屋を今日中に見たいので」
「だから潔く負けを認めるということだね」

コクンと素直に乙女が頷く。
「了解、ここの入り口は……」と綾鷹はなぜか部屋を出る。
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