恋し、挑みし、闘へ乙女
「どちらへ?」

乙女の質問には答えず、綾鷹は先程とは違う階段から図書室の真上にある小部屋に入る。

「ここは?」

窓があるのでペンライトは必要ない。

「備品室だったのだろうね」

入り口に向かって天上に付くぐらいの棚が並列に四つ並んでいる。よく見ると所々に段ボールが置いてある。

「――シーツに電球……なるほど、備品室ですね」
「こっちだ」

綾鷹が部屋の一番奥に向かう。

「その端の床を三回踏んでご覧」

綾鷹が壁際の床を足で指す。

言われた通りに乙女が踏み鳴らすと、目の前の床が一メートル四方ほど下にズレ、今度は横にスライドする。そこに狭い階段が見えた。

綾鷹がペンライトを灯す。

「――こんなところに……」

隠し部屋はそれぞれ違う方法で入室するようになっているらしい。

「ドアを見つけるのも至難の業だったでしょうね?」
「ここに君が連れ込まれた二年ほど前から地道にね」

早々に乙女は『完敗』宣言をする。

「なら、こんな短時間に私が見つけられるわけないじゃないですか」

ちょっと非難めいた乙女の視線に綾鷹がシレッと答える。

「君は作家さんだから」
「ジャンルが違います!」
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