恋し、挑みし、闘へ乙女
哀しき人々
「化け物屋敷の中はどんなでしたか?」

ミミは渋面で問いながらも、「綾鷹様も何だって私が留守中に……お嬢様に何かあったら……」とブチブチ文句を言う。

「そんなこと言われても……」と乙女は自己防衛を始める。

「万が一、ミミがいたとしても、現場検証よ。絶対に阻止出来なかったわ」
「ですが、私は桜小路家から『くれぐれも乙女を頼む』とお願いされた身です」

「この身に代えても乙女様を守らねば!」と鼻息荒く拳を握る。

「――ミミ、命を粗末にしてはいけないわ」

フルフルと乙女が首を左右に振ると、「ですが!」とミミが反論を開始する。だが、人差し指を自分の唇に当て、乙女はそれを静かに制する。

「私のためなら尚更。例え私のためだったとしても、ミミが命を落とすようなことがあったら私も自害します!」

その目が真剣だと訴える。

確かに、とミミは思う。表面上、乙女は何事にも動じない強い女を演じているが、実は脆い。我が身の犠牲でこの世から去ったら……生きてはいないだろう。

「承知しました。ですが、私よりも乙女様です。無茶な行動は禁止ですからねっ。お分かりですね! 私だって乙女様に何かあったら……」
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