恋し、挑みし、闘へ乙女
――この石……蒼玉だろうか? 女々が身に付けていた宝石の一つを思い出す。それによく似ていた。だが、こちらの方が数倍豪華だ。

綾鷹が箱からそれを取り出す。

「綺麗……」

日を浴びた宝石がさらに美しく煌めく。

「北之国で採れるスターサファイアというものだ」

「こうやって光に当てると……」とペンダントを天に向かって掲げると陽にかざす。

「あっ、六条の光が!」
「星みたいだろ? とても稀少で貴重な石だそうだ」
「そんな珍しいものを……私に?」

殿方から宝石など贈られたことのない乙女は戸惑う。
「そう、君に。似合うと思ってね」と乙女の耳元で綾鷹が甘く囁く。

「着けてあげよう」

乙女の腰に回していた腕を解き、乙女をクルッと半回転させ、背後から肩越しに腕を回しそれを着ける。

「やはり、君にはブルーがよく似合う」

乙女の顔を肩越しに覗き込みながら綾鷹が言う。

「あの……ありがとうございます」

礼を述べながら乙女は胸元に揺れるネックレスを見つめ、『ブルーが似合う』の言葉に、きっとミミに聞いたのだろう、と口元を綻ばす。

綾鷹は背後から乙女を抱き締めながら、深い息を吐く。

「やっと安心できた。気が気でならなかった。留守の間にまた何かあったらと……」

乙女を抱き締める腕に力が入る。
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