恋し、挑みし、闘へ乙女
「ご心配は無用です! お約束はしっかり守っていました」

照れ隠しに乙女が力強く言うと、「そうみたいだね」と綾鷹がクスッと笑い、ネックレスに手を添え言う。

「約束して欲しい。これをひとときも放さないと」

切願するような綾鷹の口ぶりに、乙女は「お風呂もですか?」と場違いに思える質問をする。「嗚呼」と笑いを堪え肩を震わせながら綾鷹が返事をする。

「何があってもだ」

劣化したりしないのだろうかと心配そうにする乙女に、綾鷹が安心させるように言う。

「万が一、何かあっても保証書がある。ちゃんと元通りにしてくれる」

綾鷹の顔は見えないが、何となく何か隠しているように乙女には思えた。だが、それが何であっても『ひとときも外さない』というのが綾鷹の願いなら……。

「了解しました」

贈り物に対する礼を尽くさねば、と乙女は承知する。

「うん、良い子だ」

よしよしと頭を撫でられると子供扱いされているようで、かなり心外だが……と思いながらも、過去の所業を思うと乙女は反発できなかった。

「それで、本日はお休みですか?」

出張から帰ったばかりだ。当然そうだろうと乙女は思ったが、綾鷹の返事は違った。
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