恋し、挑みし、闘へ乙女
「料理って『眼で味わい舌で味わう』って言うでしょう。上質な舌を持つマダムたちを唸らすには、全てにおいて最高の質でもてなさいと満足しないのよね」
コクコクと頷き、乙女は宝石のようなイクラに箸を伸ばす。
「ここは料理もさることながら、接客も素晴らしいですね」
「ええ、だからこそなのよね」
吹雪が満足そうな笑みを浮かべる。
きっと二ヶ月後には好評な記事が出、ダイニング司は今以上に大繁盛するだろう。
「ところで」と吹雪が渋い顔で乙女を見る。
「貴女、拐かしに遭ったのよね」
断定的な言い方だ。どこで知ったのだろう? 乙女は目を泳がせながら明後日の方を見る。何と返事をしたらいいか分からなかったのだ。
「隠さないで、知っているのよ」
凜とした声が座敷に響く。
「龍弥に聞いたの」
「へっ?」と乙女が間抜けな声を上げる。
「どどどどど……」
「どうして龍弥のことを知っているのか? でしょ」
首振り人形のように乙女がコクコクと頷く。
「あいつ、私の遠縁に当たる子でね、伯父に頼まれてあいつを悪から足を洗わせてのは私」
「もしかしたら」と乙女が訊ねる。
「探偵って……」
「そう、私が雇い主。言わばあいつは私の情報屋」
コクコクと頷き、乙女は宝石のようなイクラに箸を伸ばす。
「ここは料理もさることながら、接客も素晴らしいですね」
「ええ、だからこそなのよね」
吹雪が満足そうな笑みを浮かべる。
きっと二ヶ月後には好評な記事が出、ダイニング司は今以上に大繁盛するだろう。
「ところで」と吹雪が渋い顔で乙女を見る。
「貴女、拐かしに遭ったのよね」
断定的な言い方だ。どこで知ったのだろう? 乙女は目を泳がせながら明後日の方を見る。何と返事をしたらいいか分からなかったのだ。
「隠さないで、知っているのよ」
凜とした声が座敷に響く。
「龍弥に聞いたの」
「へっ?」と乙女が間抜けな声を上げる。
「どどどどど……」
「どうして龍弥のことを知っているのか? でしょ」
首振り人形のように乙女がコクコクと頷く。
「あいつ、私の遠縁に当たる子でね、伯父に頼まれてあいつを悪から足を洗わせてのは私」
「もしかしたら」と乙女が訊ねる。
「探偵って……」
「そう、私が雇い主。言わばあいつは私の情報屋」