恋し、挑みし、闘へ乙女
「いいえ」と乙女は首を横に振る。

「それより情報を全て国家親衛隊に開示して下さい」

吹雪の眉間に皺が寄る。

「せっかく手に入れたのに、それを流せと……」
「そうです」

うーんと唸ると吹雪は目を閉じる。ジッと考えフーッと大きく息を吐くと目を開け乙女を見つめる。

「条件を飲んでくれたら応じるわ」
「条件?」

荒立龍弥を罪に問わない。話をするのは梅大路綾鷹のみ。出版社“蒼い炎”に今後一切付き纏わない。

「以上よ。そう彼に伝えて。貴女の未来の旦那様に!」
「みっ未来の……って」

湯気が上がりそうなほど真っ赤になった乙女を見ながら吹雪がクスクス笑い始める。

「何を今さら。全部知っていると言ったはずよ」

微笑みと共に妖しげな魅力を醸し出す吹雪に乙女は見惚れる。服装を見なければ吹雪は本当に美しい女性だ。

「訊いてもいいですか?」
「何を?」

吹雪がサクッと和風春巻きを頬張る。

「どうして男装などするのですか?」
「あらっ、これも美味しいわ。乙女も温かいうちにお食べなさい」

吹雪は答えず、サクサクと和風春巻きを食べ続ける。

「だからですね!」

一本目を食べ切った吹雪に、痺れを切らせた乙女が再度訊ねる。
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