恋し、挑みし、闘へ乙女
そして、意を決したように言う。

「私は心が男性なの」
「はい?」

益々意味が分からない乙女はキョトンと吹雪を見る。

「本当に乙女は可愛いわね。でも、ごめんね、私の対象はどちらかと言えばもう少し女性らしい躰つきの子なの」

乙女の喉がゴクリと鳴る。

「まっ、まさか……黄桜編集長ってレズだったのですか!」

「シッ!」と吹雪が唇に人差し指を当て、「大声を出さないで」と注意する。

「とっくの昔に気付いていると思っていたのに……本当、乙女ってウブね」

イヤイヤイヤイヤと乙女は心の中で絶叫する。

「そんなの分かりませんよ。男装は単なる趣味? いや、出版社の宣伝だと思っていたので」

「出版社の何の宣伝だというの」と吹雪が大笑いする。
乙女も、万が一、宣伝だったら逆効果ではないだろうかと思っていた。

「離婚は……だからだったんですか?」
「そう、我慢の限界だったの」

人の性癖にとやかく言えるほど人間が出来ていると思っていないが……と乙女は初めて目にするレズビアンな人にムクムクと好奇心が沸く。

「今日は貴女の取材を受けるつもりはないわ」

だが、吹雪は先手必勝とばかり、乙女の好奇心を撥ね除ける。
「えー」と唇を尖らせる乙女を無視して吹雪が言う。
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