恋し、挑みし、闘へ乙女
「そう、真の愛」

吹雪はゆっくり息を吐き出す。

「お互いに本当に好きな人ができたの。どちらのパートナーも私たちの結婚がカモフラージュだって知っていたけど……」

それでも心苦しかったようだ。

「でも糸子様は……見合いをして結婚してしまった」

家のために逃れることができなかったそうだ。

「相手が悪かったの……」

糸川公爵は自分の浮気を棚に上げ、糸子の心がよそにあると知ると『絶対に離婚はしない』と糸子を苦しめて喜んでいるらしい。

「最低!」

ドンとテーブルに拳を打ち付ける乙女に、「ありがとう」と吹雪が礼を言う。

「彼女と世間的には結ばれないけど、私たちは魂で結ばれているの。だから、そんな哀しい顔をしないで。私たちは幸せよ」

穏やかな吹雪の顔が、強がりで言っているのではないと言う。

「もしかしたら……」
「ん?」
「反婚ピュータ軍団のリーダー……」
「あら、知っていたのね?」

吹雪は別段焦った様子も見せず、「そう、私が反婚ピューター軍団を率いているの」と口角を上げる。

「貴女を巻き込んでしまって申し訳なかったわ。でも、まさか国家親衛隊隊長、梅大路綾鷹のお見合い相手に貴女が選ばれるとは思ってもいなかったの」

「国家に反抗するのはご自身の……さっきのような過去があるからですか?」

乙女の真剣な顔に、冗談交じりだった吹雪も顔を引き締める。
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