恋し、挑みし、闘へ乙女
吹雪の瞳が涙で潤み始める。

「初めてです。編集長のそんな弱々しい姿を見るの……本当に愛していらっしゃるのですね?」

世に性別は男女しかない。いったい誰が決めたのだろう……性別を違わずして恋愛は成り立たないと……。

男同士でも女同士でも、愛する感情さえあれば恋愛は成り立つのに……。

禁忌とされている恋愛小説にも、そんな話がたくさんあった。乙女はそれを読むほどに恋をしたいと思った。

「羨ましいな……」
「ん?」

乙女の呟きに吹雪が即座に反応する。

さっきまで涙ぐんでいたのに……その目が『言わなければただでは済まない』と言っている。きっと『次回の出版を取り消す』とでも脅すのだろう。この人はそういう人だ……と乙女は諦め口を開く。

「編集長が羨ましい、と言ったのです」
「私の何が?」
「素敵な恋愛をしていらっしゃるからです」

「あらっ?」と吹雪が首を傾げる。

「貴女だって……」

フフフと吹雪が意味深に微笑む。

「その笑顔、気持ちが悪いです。私が何だと言うのですか?」
「聞いているわよ。梅大路綾鷹とラブラブなんですって?」
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