恋し、挑みし、闘へ乙女
「そんなところに!」

蘭子は玄関に続く階段の下から三段目に立ち止まると、ツタが絡まる手摺りの下に手を入れた。すると、階段脇にあった銅像が横にスライドして、そこにポカリと穴を開けた。穴には地下へと続く階段があった。

「さぁ、入って!」

呆気にとられた乙女は、もしかしたら先日見た隠し部屋は全てフェイクで、ここが本当の隠れ部屋なのかもしれない、と思った。

「早く!」

蘭子に押され穴に入り、階段を降りる。

三段目に足を下ろすと、また銅像がスライドする。ガチャンと出入り口が完全に閉じると、代わりに照明が点る。そういうシステムになっているのだろう。

階段は三十段ほどで、トンと降りた床はレンガが敷き詰められていた。
そこから左右に横穴が伸びている。

閉塞感はなく、ゆったりとした空間に綾鷹でも背を縮めることなく進めるなぁと乙女がボンヤリ思っていると、「左に進んで」と蘭子が乙女の背中を突つく。

「この先に何があるの?」
「行けば分かるわ」

蘭子がフンと鼻を鳴らす。

「答えてくれないのなら行かない」

乙女がその場に座り込む。

「ここまできて、何を駄々こねているの! 貴女、子ども?」
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