恋し、挑みし、闘へ乙女
膝を抱え丸まる乙女を蘭子は呆れるように見下ろす。そして、ヤレヤレと首を振りながら答える。

「お爺様と鏡卿がお待ちなの」
「黒棘先夜支路が!」

鏡卿は頭にあったが、夜支路のことは全くなかった乙女は思わず声を上げる。

「貴女、お爺様を呼び捨てって失礼な人ね!」

失礼も何もない! そんな危険人物までここにいたなんて、と乙女は今さらながらこの現状を後悔する。

「あらっ、ようやく期待通りの反応を見せたわね」

乙女の顔色が変わったのを目にして、蘭子が満足そうに微笑みを浮かべた。

「まっ、そういう訳だから、早く立ち上がって進んで頂戴」

ほらほら、というように蘭子が足で乙女を軽く蹴る。

「ちょっと、止めて下さい。足癖が悪いですよ!」

仕方なく乙女は立ち上がった。

「私とは偶然に会ったんですよね? なのに、準備万端じゃないですか!」
「今日は偶然だったけど、貴女をそのままにするわけないじゃない」

――ということは、「私を亡き者にでもしようと思っていたわけ?」足を進めながら乙女はチラッと蘭子を見る。自分の思い通りの展開が嬉しいのかとても楽しそうだ。
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