恋し、挑みし、闘へ乙女
「察しがいいわね。その通りよ。私たちの計画に貴女は邪魔だもの。利用価値がなくなれば始末するにきまっているでしょう?」

蘭子が舌打ちと共に右手で自分の首を真横に切る。『処刑』という意味だろう。

「最低ですね。人の命を何だと思っているんですか?」

蘭子はフンと鼻で笑うと「人?」と言って吹き出す。

「我が一族にとって人とは公爵以上の者だけ。貴女のような貧乏伯爵の娘なんて虫けらもいいところだわ」

「貴女のところは、元は男爵家だったのでは? 我が家以下でしたよね」と乙女が言い返すと、蘭子は「過去は過去」と吐き捨てる。

「我が一族はこの国を治めるに値する価値ある一族なの。だから、綾鷹様のことは諦めなさい」

「綾鷹様に執着するのは、彼を愛しているからじゃないのですか?」

「愛?」アハハと蘭子が声を上げ笑う。

「そんなまやかしの世界を信じているの?」
「愛がまやかしですか?」

蘭子はさらに声を高く笑う。

「この国の結婚は婚ピューターによって決められるのよ」
「でも、それを改ざんしているんですよね」

「ちょっと!」と蘭子が後ろから乙女の肩を掴む。

「それどういうことよ!」

驚いたような蘭子の顔を目にして、乙女は芝居ではなさそうだと思う。
< 200 / 215 >

この作品をシェア

pagetop