恋し、挑みし、闘へ乙女
「思った通りだった。おかしいと思ったんだよ」

夜支路の鋭い視線が龍弥を突き刺す。そして、その眼が蘭丸に移る。

「君もまだまだだね。こんな裏切り者の雑魚を仲間に引き入れるとは」

夜支路の声が落ち着けば落ち着くほど恐怖が募るのか、蘭丸の顔がどんどん青く強張る。

「知っているのは当然だろう。この間拐かした奴だからな」

龍弥はあくまでもシラを切るつもりらしい。
バレバラなのに……と乙女は溜息を付きながら龍弥に話し掛ける。

「元気にしてた?」
「おい!」

喋るな、というように龍弥が首を横に振る。

「君は芝居が下手だね。役者には到底なれないね」

夜支路が馬鹿にしたように笑う。

「誰も役者になんかなろうなんて思ってない!」
「黒棘先様に何て口を利くんだ!」

蘭丸がグイッとリードを引っ張る。途端に喉に圧がかかったのか龍弥が咳き込む。

「ちょっと乱暴はよしなさい!」

乙女が蘭丸を睨む。

「本当に威勢のいいお嬢さんだ。敵に回すのが惜しい」

夜支路がクックッと笑みを漏らす。

「お爺様! 冗談でもそんなことを言わないで」

蘭子が乙女を睨み付ける。

「お前のそれは嫉妬だ。私は冷静な眼で彼女の資質を分析したまでだ。何にしても、もうお前と梅大路綾鷹の見合いはない」
< 204 / 215 >

この作品をシェア

pagetop