恋し、挑みし、闘へ乙女
「えっ!」と蘭子が間抜けな顔になる。寝耳に水だったようだ。

「嘘っ、この女を排除したら綾鷹様とのお見合いをセッティングするって」
「予定変更だ」

夜支路の冷たい声が断定的告げる。

「いやよ!」

蘭子の悲鳴にも似た叫び声が部屋の中に響く。

「駄々を捏ねるんじゃない! 梅大路綾鷹は知りすぎた」
「それはどういう意味ですの?」

蘭子が食い下がる。

「文字通りだ。なっ? お嬢さん」

同意を求めるように乙女に視線を向ける夜支路に、意味が分からず乙女はキョトンとする。

「梅大路綾鷹を軽く見ていた。あいつはもうほとんど調べ上げたのだろう?」

なるほど、と乙女は先程の夜支路の言葉を思い出す。
彼は『分が悪い』と言った。

「だから、最後の悪あがきですか?」

乙女の凜とした視線が夜支路を真っ直ぐに見つめる。
フッと片唇を上げた夜支路が「大したお嬢さんだ」と乙女をジッと見返す。

「着いてきなさい」
「私に言っているのですか?」
「嗚呼、桜小路乙女、君に言っている」

「行くな!」と龍弥が叫ぶ。
「煩い、黙れ!」と蘭丸が龍弥を蹴っ飛ばす。
「お爺様! まだ話は終わっていないわ!」と蘭子が悲鳴に似た声を上げる。
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