恋し、挑みし、闘へ乙女
「君は心底お人好しだね。もし、正真正銘のワルだったら?」

悪戯っぽい瞳がやはり月華の君に似ていると乙女は思う。そんな人がワルなどであるはずがない。

「月華の君を守るためですか?」

一瞬だけ鏡卿が顔を引き締めた。だが、すぐにフフンとおかしそうに鼻を鳴らす。

「どうしてそう思うんだい? 彼は私から全てを奪った張本人だよ」
「歴史的に言えばそうですが、真実は違うのでは?」

「ふーん」と興味深そうな瞳が乙女を見つめる。

「では、作家大先生はどう考えているのかな?」

鏡卿が長い足を組む。

「知っているのですか? 私がチェリー・ブロッサムということを?」

乙女の顔に戸惑いの色が現われる。それを面白そうに見つめながら「当然」と鏡卿が頷く。

「だって、コンピューターを操っているのは私だからね」
「ということは、見合い相手を探す婚ピューター操作をしていたのも鏡卿だったのですか?」

鏡卿は素直に頷く。

「でも……私の話の前に、君の話を聞きたい」

組んだ足の上にトントンと人差し指を打ち付ける。
早く言いなさい、と言っているようだ。

「――鏡卿はとても頭がいいとお聞きしました」

意を決して乙女は話し始める。
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