恋し、挑みし、闘へ乙女
「私のお相手も、風間お兄様のような男性だったらいいのだけど……黄桜編集長の例もあるし……」

婚ピューターが万能ではないことは周知の事実だった。

「なのに、どうしてこのシステムを続けるのかしら?」

浴槽の縁に頭を預け、天井を仰ぎ見る。
湯気の中に“和之国”の国王、月華の君がボンヤリ浮かぶ。

「そうよ、月華の君がボンクラで怠慢すぎるのがいけないんだわ!」

誰かに聞かれたら、それこそ『王を愚弄した者』として逮捕されただろう。なぜなら、“和之国”は絶対君主制度の国だからだ。

故に、ミミが度々言っているが、婚ピュータが選ぶ相手への“拒否”は国王に背く者、いわゆる“反逆者”となる。余程のことがない限り破談はない。

「あの家出が成功していたら、余程の訳になったのに……おのれ梅大路綾鷹!」

悔しさでギリッと唇を噛む。

「――離婚も出来ないし……」

離婚も同罪だ。但し、三人以上子供をなした場合だけ、処罰は免れ十日間の投獄も免れる。しかし、再婚は許されない。離縁しても子供への養育が何よりも優先されるからだ。

再婚が許されているのは死別だけで、この場合のみ婚ピューターの関与はない。
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