恋し、挑みし、闘へ乙女
「だから不審死が多いんだわ」

ここ数ヶ月、高爵位夫婦の事件が相次いでいた。夫婦どちらかの浮気が原因らしい。

「それもこれも婚ピューターのせいだわ。この間も……」と乙女は先日目にした緊急速報を思い出す。

「梅大路綾鷹め!」

ギリギリ奥歯を噛む。

「あの男、いけしゃあしゃあとあの事件でもインタビューに答えていたわよね。本当、ムカつく」

超ズームのアップにも難なく耐えたイケメン顔を思い出す。

「ニュースに再々出てるから顔は知っていたけど、そうだった……国家親衛隊の隊長だった。あの若さで最高位なんだと思ってたんだ」

年齢は確か……とこめかみをグリグリしながら目を瞑る。

「二十八歳だ! 実物はもっと若く見えるけど……」と綾鷹の姿を思い出すとブルンと頭を振る。

「ヤメ! あんな意地悪男、金輪際思い出したくもない」

ザバンと湯から出ると、乙女は親の敵のように体を洗い始める。



小一時間の入浴を済ませた乙女が脱衣室から出るとミミと駒子、そして、上機嫌の一葉が待ちかねていた。

「乙女さん、今日は一段と綺麗だわ」と一葉。
「さぁさぁ、まずは髪を整えますよ!」と駒子。
「お化粧はナチュラルに! でもシッカリと!」とミミ。

三人は嬉々と張り切り乙女を変身させていく。
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