恋し、挑みし、闘へ乙女
まるで着せ替え人形のようだ。ここまできたら乙女ももうどうでもよくなり、言われるがまま、されるがままになっていた。

「ところで会場はどこなの?」

一葉がミミに訊ねる。
見合い会場やお相手は当日でなければ分からないシステムになっている。

「先程、連絡がありました。鳳凰ホテル紅の間だそうです」
「鳳凰ホテル! なら、お相手も期待できそうだわ」

何という短絡的な思考だろう、と乙女は思うが、だから父のような人と添い遂げられのだろう……と思い直す。

「でも、会場でしかお相手を知り得ないというのも、何だかだわ」

女々のお見合いを思い出したのだろう、一葉が眉間に皺を寄せる。

「お姉様のときは本当にサプライズでしたものね」
「笑い事ではありませんよ。また今度もだったらと思うと……」

一葉は「ここ数ヶ月、眠れなかったのよ」と眉をひそめる。

「あら、お姉様はとても幸せそうだわ」

乙女の言葉に、「今はね」と一葉が険のある言い方をする。

「でも、当時はどれほど笑い者にされたか」

乙女も覚えている。才色兼備の女々がカスを掴まされたと陰口を叩かれていたことを。
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