恋し、挑みし、闘へ乙女
「またお会いしましたね」
「おや? 綾鷹、君は彼女を知っていたのかい?」
月華の君が少し驚いたように訊ねる。
「はい。顔だけはパーティーで何度か」と言い、「それに、つい先日、奇妙なご縁で知り合いになりました」
綾鷹が意味深に笑む。余計なことを言うなと乙女は眼で綾鷹の言葉を制する。そこにノックの音が聞こえ、「失礼します」と上品な婦人がお茶と茶菓子の載った盆を持って入ってきた。
どう見ても仲居には見えないと乙女が思っていると、婦人が深々と頭を下げる。
「本日はようこそお越し下さいました。当ホテルの女将をさせて頂いております、白鳥美空〈しらとりみそら〉と申します。どうぞごゆるりとお過ごし下さい」
女将がお茶の準備を済まして部屋を後にすると、待ち構えていたように月華の君が言う。
「まぁ、何はともあれ座りましょうか」
だが、一葉も乙女も固まったまま動かない。
「おやおや。陛下、先に少し説明が必要かもしれませんよ」
含み笑いを浮かべたまま綾鷹が言う。
「なら、君が説明をしてくれ」
「御意」
綾鷹が左胸に手を当て、軽く頭を下げ乙女の前に立つ。
「桜小路乙女さん、単刀直入に言います。貴女の見合い相手は月華王です」
「おや? 綾鷹、君は彼女を知っていたのかい?」
月華の君が少し驚いたように訊ねる。
「はい。顔だけはパーティーで何度か」と言い、「それに、つい先日、奇妙なご縁で知り合いになりました」
綾鷹が意味深に笑む。余計なことを言うなと乙女は眼で綾鷹の言葉を制する。そこにノックの音が聞こえ、「失礼します」と上品な婦人がお茶と茶菓子の載った盆を持って入ってきた。
どう見ても仲居には見えないと乙女が思っていると、婦人が深々と頭を下げる。
「本日はようこそお越し下さいました。当ホテルの女将をさせて頂いております、白鳥美空〈しらとりみそら〉と申します。どうぞごゆるりとお過ごし下さい」
女将がお茶の準備を済まして部屋を後にすると、待ち構えていたように月華の君が言う。
「まぁ、何はともあれ座りましょうか」
だが、一葉も乙女も固まったまま動かない。
「おやおや。陛下、先に少し説明が必要かもしれませんよ」
含み笑いを浮かべたまま綾鷹が言う。
「なら、君が説明をしてくれ」
「御意」
綾鷹が左胸に手を当て、軽く頭を下げ乙女の前に立つ。
「桜小路乙女さん、単刀直入に言います。貴女の見合い相手は月華王です」