恋し、挑みし、闘へ乙女
「ほらご覧なさい。お嬢様だって奥様に叱られるのは恐ろしいのでしょう?」
時々、乙女は思う。間もなく十八歳になる自分よりも、年下のミミの方がずっと年上に見えると。
ミミは十七年教育と並行して、行儀見習いのために十六歳の誕生日から桜小路家に住み込んでいる。
当初、運輸業を営む裕福な三奈階家は、いくら愛娘が選んだ奉公先といっても“桜小路家”ということに難色を示した。理由は単純、桜小路が貧乏だからだ。
だが、三奈階家は男爵家。たとえ桜小路家が貧乏だからと言っても、そこは腐っても伯爵家。格は断然上だった。それ故、三奈階家の面々も渋々だが承知したらしい。
しかし、やはり落ちぶれた家に行儀見習いに来るということが、乙女は不思議でならなかった。
ただ、もしかしたら、と思うことはあった。
どんな経緯で知り合ったかまでは分からないが、ミミは兄に恋心を抱いているのではないだろうかと。だからここに来たのではないだろうかと思っていた。
そんなミミも桜小路家に来てもうすぐ一年になる。今ではなくてはならない存在だ。当然、乙女の世話役としてもだが、桜小路家の収入源としてもだ。
行儀見習い先に“お世話代”として届けられる月々の月謝がかなりの額になる。ちなみに、この額は、収める側宅の納税額から割り出される。
だが、この収入はミミが十八になる年になくなる。
なぜなら、国が定める規則に沿い、ミミが見合いをして結婚するために桜小路家を去るからだ。
だが、その規則は乙女にも言えることだった。
基本、高爵位の娘は行儀見習いは免除されているが、十八歳を迎える年に見合いをして結婚することは国中のどの娘にも試行される規則だった。
国が認める職業に就く者以外、例外は認められていない。
時々、乙女は思う。間もなく十八歳になる自分よりも、年下のミミの方がずっと年上に見えると。
ミミは十七年教育と並行して、行儀見習いのために十六歳の誕生日から桜小路家に住み込んでいる。
当初、運輸業を営む裕福な三奈階家は、いくら愛娘が選んだ奉公先といっても“桜小路家”ということに難色を示した。理由は単純、桜小路が貧乏だからだ。
だが、三奈階家は男爵家。たとえ桜小路家が貧乏だからと言っても、そこは腐っても伯爵家。格は断然上だった。それ故、三奈階家の面々も渋々だが承知したらしい。
しかし、やはり落ちぶれた家に行儀見習いに来るということが、乙女は不思議でならなかった。
ただ、もしかしたら、と思うことはあった。
どんな経緯で知り合ったかまでは分からないが、ミミは兄に恋心を抱いているのではないだろうかと。だからここに来たのではないだろうかと思っていた。
そんなミミも桜小路家に来てもうすぐ一年になる。今ではなくてはならない存在だ。当然、乙女の世話役としてもだが、桜小路家の収入源としてもだ。
行儀見習い先に“お世話代”として届けられる月々の月謝がかなりの額になる。ちなみに、この額は、収める側宅の納税額から割り出される。
だが、この収入はミミが十八になる年になくなる。
なぜなら、国が定める規則に沿い、ミミが見合いをして結婚するために桜小路家を去るからだ。
だが、その規則は乙女にも言えることだった。
基本、高爵位の娘は行儀見習いは免除されているが、十八歳を迎える年に見合いをして結婚することは国中のどの娘にも試行される規則だった。
国が認める職業に就く者以外、例外は認められていない。