恋し、挑みし、闘へ乙女
「彼女の言う通りです。罰など受ける必要はありません」

月華の君が一葉に向かってニッコリ微笑む。その魅惑的なこと。途端に一葉の頬が真っ赤に染まる。

「――ところで、貴方様は?」

一葉が少女のように、はにかみながら思い出したように視線を綾鷹に向ける。

「これは失礼致しました」

綾鷹は立ち上がるとスッと背筋を伸ばし、「国家親衛隊隊長、梅大路綾鷹と申します」と胸に手を置き、紳士のお辞儀をする。

「まっ、そう言えば……」と一葉の瞳が煌めく。

「テレビなどで再々拝見しているナイスガイな、あのお方だわ!」

国家親衛隊隊長というフレーズが一葉のテンションを無駄に上げる。

「――あら?」

だが、何か思い当たることがあるのか視線を天井に向ける。そして、三秒後、「あぁぁぁ!」と叫び声を上げた。

「梅大路というと、月華王と縁続きの公爵家で大財閥の、あの梅大路家じゃないですか!」

ニッコリと微笑みながら綾鷹は「さようです」と答える。
一葉は目をパチクリとしながら頬を抓り、「痛い!」と顔を顰め現実に戻る。

「月華王とのご縁談は身分違いだと思われ、反故は妥当だと思います。なら、梅大路様も同様ではないでしょうか?」

一葉の思いも寄らない言葉に乙女はウンウンと大きく頷く。それを横目に一葉が提案する。

「畏れ多すぎます。ゆえに今回のお見合いの件はご破算にして頂き、新たなお相手を婚ピューターで選んで頂く……というのはどうでしょう?」
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