恋し、挑みし、闘へ乙女
黙って聞いていた乙女も、「さようです!」と力強く賛成し、「ぜひ反故に!」と言ったところで、綾鷹がニッと悪い笑みを浮かべ言う。

「それはできかねます」
「なぜですの?」

乙女がすぐさま訊く。

「よく考えてくれたまえ。この場が見合いだとホテルの者も一部だが知っている。そして、今、ここにいるのは陛下と私だ」

あっと乙女が口を開ける。

「分かったようだね。君の相手は陛下か私なのだ。どちらにしても破断は有り得ない。そんなことをしたら世の中が途端に乱れる」

何てこと! 乙女が頭を抱える。

「乙女さんは、相手が彼でご不満ですか?」

月華の君がクスクス笑う。

「綾鷹、君をこんなふうに袖にする女性を僕は初めて見たよ」
「ええ、私もです」

綾鷹も笑い出す。

「あの……素朴な疑問をひとついいですか?」
「ええ、どうぞ」

綾鷹が一葉に向かってコクリと頷く。

「どうして月華の君が付添い役……あら、違うわ、本来、見合いの相手は……」
「その説明は僕がしましょう」

一葉の言いたいことが分かった月華の君が話を受け継ぐ。
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