恋し、挑みし、闘へ乙女
「ということは、王自ら反逆者ということですか?」
「そうですね。そういうことになりますね」

「何てことでしょう!」と困惑したような一葉の声が場に響く。

「亡き父の遺言なのです。父は国のことよりも、僕が幸せになることを望んでいました。でも、母が……というより、母のバックにいる者はそれを望んでいません」

月華の君が深い息を吐き、「ここまで話つもりはなかったのに……」と声を落とす。

「これから話すことはオフレコでお願いします」

乙女と一葉が頷くと、月華の君が静かに話し始める。

「――両親の仲は険悪でした。母は悪い人ではないのですが……言うなれば、婚ピュータの犠牲となったのです。それも違法に操作された結果で……」

「それはどういう意味ですか?」

乙女と一葉は、意味不明だと言うように顔を見合わせ首を横に振る。

「母の実家、黒棘先家が図ったのです」
「ここからは私が説明します」

月華の君の歪んだ顔を見兼ね、綾鷹が話を引き継ぐ。

「当時、黒棘先家は男爵の位にあり、蝶子王太后の父親、夜支路は婚ピュータ室に勤めていました。夜支路は強い野望を持つ男で、娘を国王妃にしようと考えたのです」
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