恋し、挑みし、闘へ乙女
「もしかしたら婚ピュータの改ざん?」

話にすっかり引き込まれてしまった乙女は、「事実は小説より奇なりだわ」と嬉々とする。

「乙女さんの言う通りです。夜支路はその思いを実行してしまった」

「何ということでしょう!」と一葉の方は驚き呆れ、瞬きを繰り返す。

「――縁もゆかりもない、結ばれるはずのない男と女が無理矢理結ばれ繋いだ縁、上手くいくはずがありません。それでも継承者は残さなくてはならない……」

「で、僕が生まれたわけです」と月華の君が何とも言えない笑みを浮かべる。

「そんなふうに生まれたのに、父は僕を慈しみ愛してくれた」

月華の君がどこか遠くを見、ポツリと呟く。

「――父は僕を守ろうとして殺されたのです」

「えっ!」と乙女と一葉が同時に月華の君を見る。

「公には病死となっていますが……婚ピュータの改ざんを調べたからです」
「黒棘先家は現在、伯爵の地位にあります」

綾鷹が言う。

「そして、婚ピュータ室の責任者でもあるのです」
「もしかしたら……改ざんは今も行われている、と言うことですか?」
< 35 / 215 >

この作品をシェア

pagetop