恋し、挑みし、闘へ乙女
「ええ、乙女さんの言う通りです」
「でも、どうして私が月華の君のお相手に……」
「おや、分かりませんか? 貴女が書いている……」

「うわぁ!」と大声を上げ、乙女は自分の唇に人差し指を当て、「シッ!」と綾鷹を制する。

「もう何ですか、乙女さん! 大声を出したりなんかして、はしたない!」

一葉がメッと乙女を睨む。どうやら、綾鷹の言葉が聞こえていなかったようだ。

乙女はホッと胸を撫で下ろすも、どうして作家活動のことを知っているのだろう、と首を捻る。すると再び一葉が訊ねる。

「ですが、婚ピュータ室の方って黒棘先の息のかかった人なのでは?」
「どうして知らせて来たのか、ですよね?」
「それは、彼が隠密に潜り込ませた私の部下だからです」

月華の君の代わりに綾鷹が答える。

「夜支路は陛下の廃位を狙っているのです」
「あら、でも、廃位しても、二番目は……」
「ええ、私です」

綾鷹曰く、「夜支路には蝶子王太后の他に険支路という息子がいます。彼の娘、蘭子を私の妻にしようとしているのです」だった。

蘭子は夜支路と気質がそっくりだと言う。
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