恋し、挑みし、闘へ乙女
そこに「お決まりですか?」と女給が注文を取りに来る。

店内に入ってきたときから気付いていたが、彼女の目はずっと綾鷹に釘付けだ。だから、乙女の悪口も耳に入らなかったようだ。

「オムレツライス、ケチャップ多めとビフテキを……あっ、ビフテキのライスはパンに変えられるかな?」

綾鷹の質問に、ハートの目で女給が答える。

「はい! パンですね。賜りました」
「それと食後にコーヒーを二つ」

「はい!」と女給は愛想よく返事をするとチラリと乙女に目をやり、ツンと顎を上げ奥の間に消える。

「何あの勝ったみたいな態度!」

確かに彼女の方が妙に色っぽく胸もある……でも、化粧ババアじゃない、と乙女はイーダと歯を剥き出す。

「君は何をやっているのかな?」

ハッと綾鷹を見ると、彼は満面に笑みを浮かべていた。

「いっいえ、別に!」

もうやだ! この人といるとお馬鹿なところばかり見られる! 疫病神?
そっぽを向く乙女に綾鷹が言う。

「相当、腹が減っているようだね。怒りのボルテージが最高値みたいだ」
「その異国語混じりの言葉遣い、癇に障ります!」

乙女が苛立ち紛れに言うと、綾鷹が「君にも学んでもらわなければね」と宣う。

「はい? どういう意味ですか?」
「それも花嫁修業の一環だと言うことだよ」
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