恋し、挑みし、闘へ乙女
「全く興味のない分野だわ。いくら見合い結婚が嫌だとしても、作家を辞めて国許可職に就くなんて、それこそ本末転倒というものよ」

ミミは、そっちの方がどれだけいいか、と心の中で呟く。

「だったら仕方がありませんね。おとなしく規則に従って下さい」
「ミミはそれでいいの?」
「どういう意味でしょう?」

キョトンとした顔が乙女を見る。

「まんまよ。お兄様が好きなんでしょう?」

途端にミミの顔が真っ赤に上気する。
トマト色に染まった顔を見ながら、やっぱり、と乙女は思う。

「どどどどしてそのことを……」
「知っているのかって? そんなの見てれば分かるわよ」

萬月を前にしたミミの態度はいつも挙動不審だった。

「告っちゃえばいいのに。お兄様にはまだお相手がいないんだし」
「そっそんな畏れ多いことできません」

激しく手と首を振りながらミミが裏返った声で言う。

「そっそれに、婚ピューターには逆らえません」
「どうして?」
「反逆罪で逮捕されるじゃありませんか!」

ミミの言う通りだった。“和之国”では例外なく『男女の縁は婚ピューターが選んだ相手』と決められていた。

そして、それに従うように小さな頃から教育され、背く者は見せしめのように処罰が課せられた。
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