恋し、挑みし、闘へ乙女
「ああ、紅子さん、ただいま」

この人が……と乙女はドアの前に立つ、駒子とは対照的な大柄の女性を見つめる。

「桜小路家のお嬢様、乙女様ですね」

紅子が威厳のある声で確認する。

「お初にお目に掛かります。乙女です。お世話になります」
「おやめ下さい! 使用人に頭をお下げになる必要はございません」

ビシッと言い切る紅子にミミが言う。

「申した通りでしょう。お嬢様は人間皆平等主義なのです」
「――困った主義ですね。花嫁修業の内容に“主義の訂正”を加えなくては」

ブツブツと呟きながら、「居間でお待ち下さい。私はお茶の支度をして参ります」とミミを伴い台所に消える。

「紅子さんって……迫力がありますね」

居間への廊下を歩きながら乙女がポツリと呟くと、綾鷹がプッと吹き出す。

「確かに! 紅子さんは内外共にパワフルな女性だ。でも、優しい素敵な女性だよ。きっと君の力になってくれる」

彼がそう言うのならそうなのだろう、と乙女は何の確証もないがボンヤリ思い、コクンと頷く。

「それに彼女の淹れたコーヒーが絶妙に旨いんだ」
「お家でコーヒー?」

珍しい、と乙女が思っている間に居間に着く。
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