恋し、挑みし、闘へ乙女
「私が君に恋をしていないとでも? 私は君に一目惚れしたというのに」
「はい?」
「婚ピューター云々以前に、出版社の件で君を偶然知ってから君に恋をしている」

次々に飛び出てくる突然の激白に、乙女の思考回路がショートする。
ソファに固まる乙女に、綾鷹が言う。

「だから、早く君も私を好きになっておくれ」

好き……好き……乙女の頭の中をその単語がグルグルとローテーションする。

そこに、「失礼します」とコーヒーの香りが漂うトレーを持った紅子と、ケーキの乗ったトレーを持ったミミが入ってきた。

「うーん、いい香りだ」

綾鷹が大きく息を吸い込むと、紅子が「恐縮です」と微笑む。

「ん? 乙女様、いかがなさいました? お顔が赤いようですが……」

ミミはトレーをローテーブルに置くと、「失礼します」と乙女の額に手を当てる。

「あら、まぁ、大変! お熱が」
「どうしたというのですか? 先程はそんな素振り、ありませんでしたよ」

紅子の言葉にミミは大きく頷く。

「乙女様は色々発達段階でして、未だに知恵熱を出されるのです」
「まさか、綾鷹様がよからぬことを……」

紅子が疑わしげな視線を綾鷹に向ける。
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