恋し、挑みし、闘へ乙女
「お嬢様の小説は辛うじてファンタジー扱いされているので今のところセーフですが、“恋愛結婚”はもう死語の世界、この国では反逆行為と見なされる行為なのですよ」

ミミはここぞとばかりに力説する。

「国家親衛隊の中には、出版社“蒼い炎”を『反逆に等しい存在』と言っている者もいるらしいです。だからですね」

「出版社と縁を切り、小説を書くのを止めろ、とでも言うの?」

乙女がギロリとミミを睨む。

「絶対に止めない! 男女の縁において恋愛ほど至極の結び付きはないもの! その究極たる結末が恋愛結婚! 私はそう思うもの」

乙女は禁書と言われる古い恋愛小説を幾冊も読み、胸をときめかせた。そして、愛し愛され結ばれる、そんな男女が培う愛が世界に溢れてこそ平和で温かな世を作るのだと信じていた。

「たとえそうだったとしても、規則は規則です」

ミミは頑として乙女の言葉を肯定しない。それはひとえに乙女を反逆者にしたくないからだ。

「私には時間がないの。間もなく十八歳よ! たとえ罪人になっても私は婚ピューターの選んだ人となんてお見合いなんてしたくない! そんな人と結婚したくない! 小説も書き続ける!」

そう言いながら乙女は、ここ一年ずっと温めていた計画を思い浮かべ、唇を一文字にギュッと固く結ぶ。
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