恋し、挑みし、闘へ乙女
決行は……誕生日の一週間前、四月十一日! 明日だ。

ワクワクする気持ちが笑みを誘う。それを抑えるように乙女は奥歯を噛む。

この計画はミミにも知られてはいけないからだ。
乙女の計画とは……ズバリ家出!

彼女は見合い当日まで身を隠して、見合いをすっぽかそうと思っているのだ。
そんな失礼なことをしたらきっと破談だ。

むふふと心の中でほくそ笑む。

お相手はきっと婚ピューターに再選出を申し出るだろう。一葉だってそうなれば打つ手はない。

破談された者は異端児の烙印を押され、その末路は一生独身だ。
どうせ恋愛結婚できないのならそれでいいと乙女は覚悟を決めたのだ。

気を許すと悪巧みに頬が綻びそうになるのを再びヒシッと堪え、「でも……そうは言っても、見合いの期日は迫っているし……」と芝居がかった大袈裟な溜息を吐く。

「私の命もあと僅かなのね……」
「縁起でもない! 見合いごときに何を死にそうになっているのですか!」

ミミは呆れながらも乙女の様子が従順なのを見て、観念したのだなと少しホッとする。

「ところで、当日のお召し物はどうなさいますか?」

気分を変えるように、はしゃいだ調子で問うミミを、乙女はシメシメと思いながら訊ねる。

「どうしてミミがウキウキするの?」

「当然です。乙女様の一世一代の祝い日です。これをウキウキせずしていつウキウキするのですか!」
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