恋し、挑みし、闘へ乙女
その顔を見ながら、彼はシロだな、と乙女は思うが、上ノ条に対する疑惑は晴れずに残ったままだった。
そんな話が二人の間で交わされていると知らないギャラリーは、美しい二人のダンスに魅了されウットリと魅入っていた。
「綾鷹様、私ちょっと」
しばらく踊っていた乙女がモジモジとしだす。
「――ん? ああ、トイレか?」
「もう、ストレートに言わないで下さい」とプリプリしながら乙女は綾鷹から離れる。その背に「気にするな、生理現象は誰にも止められない」と追い打ちを掛けるように綾鷹が言う。
「本当、デリカシーに欠けた男!」
床を踏み鳴らしながら乙女はレストルームに飛び込む。
「桜小路乙女さんって、貴女?」
乙女が洗面所から出てくると、待ち構えていたように声を掛けられた。
誰? 牡丹のような深紅の紅をさした妖艶な美女だった。
「わたくし、黒棘先蘭子と申します」
「えっ!」
「その顔はご存じのようね。わたくしのこと」
おそらく自分と同じ年ぐらいだろうと乙女は思ったが、威風堂々としたその態度はグンと年上に見えた。
「貴女、梅大路綾鷹様のお見合い相手らしいわね。その指輪も彼からかしら?」
蘭子のキツイ眼が乙女の右手薬指に落ちる。
そんな話が二人の間で交わされていると知らないギャラリーは、美しい二人のダンスに魅了されウットリと魅入っていた。
「綾鷹様、私ちょっと」
しばらく踊っていた乙女がモジモジとしだす。
「――ん? ああ、トイレか?」
「もう、ストレートに言わないで下さい」とプリプリしながら乙女は綾鷹から離れる。その背に「気にするな、生理現象は誰にも止められない」と追い打ちを掛けるように綾鷹が言う。
「本当、デリカシーに欠けた男!」
床を踏み鳴らしながら乙女はレストルームに飛び込む。
「桜小路乙女さんって、貴女?」
乙女が洗面所から出てくると、待ち構えていたように声を掛けられた。
誰? 牡丹のような深紅の紅をさした妖艶な美女だった。
「わたくし、黒棘先蘭子と申します」
「えっ!」
「その顔はご存じのようね。わたくしのこと」
おそらく自分と同じ年ぐらいだろうと乙女は思ったが、威風堂々としたその態度はグンと年上に見えた。
「貴女、梅大路綾鷹様のお見合い相手らしいわね。その指輪も彼からかしら?」
蘭子のキツイ眼が乙女の右手薬指に落ちる。