恋し、挑みし、闘へ乙女
「了解。レディー、大広間にオードブルが準備してあります。どうぞこちらに」
「お食事？」

乙女の瞳が輝く。

「乙女、おとなしくしているのだよ」

綾鷹が軽くウインクすると、ホッホッホッと佐竹が明るく笑う。

「これはこれは、梅大路君もお見合い相手には弱いと見える」

からかうような佐竹の目を避けるように、「上ノ条様、参りましょう。失礼致します」と乙女はそそくさとその場を後にする。

「本当、綾鷹様の周りの方って意地悪な人ばかり！」

大広間への廊下を歩きながら乙女はムッと唇を突き出す。

「そうじゃなくて、君がからかいやすいからじゃない？」

先程まで畏まっていた上ノ条の言葉使いがいきなり崩れる。

「それどういう意味ですか？」
「まんまだよ。君って見るからに天然っぽいよね」

この男！　私に何か恨みでもあるのか、と乙女が上ノ条を見ると、上ノ条がニヤリと笑う。

「だけど……君ってある意味鋭いよね」

益々意味が分からない、とハテナを浮かべながら上ノ条を見る。

「僕はね綾鷹が好き。蘭子が君をライバル視するように、僕も君をライバル視しているってこと」

乙女の足がピタリと止まる。
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