恋し、挑みし、闘へ乙女
やっぱり、と思いながらも乙女は興奮する。

「おぉぉ! 生ゲイ!」
「失礼な人だね。女性もいけるからバイだ」

乙女の瞳が豆鉄砲を食らったように真ん丸なる。

「生バイとは、美味しい……いや、バレたら追放ものでは?」
「君もだろ? 作家チェリー……」

「えっ! あっ、シッ!」と乙女が唇に人差し指を当て言う。

「どっどうして知って……あっ、貴方も国家親衛隊のお一人?」
「まぁ、そんなところ」

上ノ条の桜色した唇がニヤリと上がる。
美人すぎる……妖しく笑む上ノ条に目を奪われていると、彼が言う。

「僕と綾鷹は幼馴染なの。僕はね、綾鷹のことが小さな頃から大好きだった。恋愛対象としてね。だから、君のことは絶対に認めない。でも、君を失い失意の底に陥る綾鷹は見たくない。だから、不本意だが僕も君を守ることにした」

「意外といい人なんですね」

思わず口を突き出た乙女の正直な言葉に、上ノ条は「本当に君は失礼な女だ」とムッとする。

「僕はね、正々堂々と闘いたいだけ。幽霊と闘いたくないだけ」
「それは……私が殺される、ということですか?」

上ノ条がフフフと顔をほころばせる。
その笑み、怖いんですけど、と乙女は顔を引き攣らせる。
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