恋し、挑みし、闘へ乙女
「そうだよ。君は狙われている。綾鷹も言っていただろう?」

確かに、と乙女は頷く。

「敵は人を人とも思っていない欲に駆られた亡者だ。君みたいな者など虫けらも同じ」

蔑んだ眼が乙女を見下ろす。
虫けらって……と乙女が若干傷付いていると……。

「そんなライバルにもならない女……なのに、どうしてだろう? 綾鷹は君を気に入っている。それが無性に悔しい! だから、僕は自分が納得するまで君を守りつつ観察することにした」

観察って、と乙女は呆れる。

「本当に綾鷹様を含め、彼の周りの人たちって……失礼極まりない人ばかりですね」
「お褒め頂き恐悦至極に存じます」

上ノ条が馬鹿にしたように笑い、恭しくお辞儀をする。

「とにかくだ。君は自分の命を守るため、敵と味方の区別を咄嗟に判断し見極めなければいけない。僕は君を嫌っているが君の敵ではない」

あれっ、と乙女は思う。

「もしかしたら、そのことが一番言いたかったことですか?」
「まさか! 僕は君にライバル宣言をしたかっただけ」

だが、そう否定しながらも彼の頬は朱に染まる。それを見ながら、もしかしたら、綾鷹同様、厭な人だと思う人が味方なのではないだろうか、と乙女は思うのだった。
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