恋し、挑みし、闘へ乙女
甘い誘惑
「まぁ! そんなことが!」

驚いたミミは、口に入れようとしたクッキーを手に持ったまま思わず立ち上がる。

「なら尚更です。作家活動などお止め下さい!」

ギュッと握った手の中でクッキーがバラバラになり、パラパラとテーブルに落ちる。

「もう、ミミったら、蟻がくるでしょう」
「何を呑気なことを言っているのですか! 命を狙われているというのに」

「まあ、そうなんだけどね……」と言いながら、乙女はコクリと紅茶を飲む。

「でも、現状、作家活動と黒棘先一派は関係ないと思うのよ」
「そういう考えが呑気だと申しているのです!」

ミミはドスンと腰を下ろすと、グラスの水を一気に飲みブハッと息を吐き出して言う。

「敵も馬鹿ではないはずです。ストレートにぶつかってこないでしょう。絶対にお嬢様の弱点を突いてきます。お嬢様の弱点とは、チェリー・ブロッサムがお嬢様だと知られること……ではありませんか?」

確かに……バレては困ると乙女は頷く。

「だからです! 今すぐ止めて下さい」
「でも……」
「“でも”も“しかし”もありません!」

鼻息荒くミミはダンとテーブルにグラスを置く。

「おやおや、随分、荒れているね」
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