恋し、挑みし、闘へ乙女
「綾鷹様!」

ドアの方に目をやったミミが真っ赤になる。

「今日はちゃんとノックをしたよ。でも、聞こえなかったみたいだね。返事がなかった。まぁ、あれだけヒートアップしていたら当然か」

綾鷹の言葉に益々ミミは顔を赤らめる。

「アッ、私、用事を思い出しました、では、これにて失礼致します」

綾鷹の視線から逃れるように部屋を飛び出したミミに、乙女は声も掛けられずフルフルと首を振る。

「本当にお人が悪い! バツが悪くてミミが逃げ出したではありませんか」

責めるように言う乙女に綾鷹がおもむろに言う。

「彼女の言っていたことは正しい」
「盗み聞きしていらしたのですね。趣味が悪いですよ」
「人聞きの悪い言い方だね。ノックをしようとしたら聞こえてきたのだ」

物は言いようだ。フンと乙女は鼻を鳴らす。

「君も本当は分かっているのだろ?」
「ミミの言ったことですか? 当然です! でも、私は敵に屈したくありません!」
「命さえも作家活動に捧げるというのかい?」

綾鷹が怒ったように言う。

「命あっての作家活動だと思わないのか? この件が片付くまででいい、おとなしく出来ないか?」

最後の方は懇願するような言い方だった。
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